第1回|初回測定・現状把握

📊 対応する当日スライド

第1回の当日スライドと、本テキストは内容を対応させています。

スライドは「現場で握る要点」、テキストは「読み返して理解を深める詳細版」として使い分けてください。

この章で押さえる4つのこと


この回の目的

第1回のゴールは、2つだけです。

  1. 自分の現在地を知ること
  2. 怪我のリスクを減らすこと

この2つです。それ以外は、今日は求めません。

うまく投げる必要はありません。良いところを見せる日でもありません。

今日ここで正確な現在地が取れていないと、残りの7回すべてが、あてずっぽうになります

そして、もうひとつ。この2ヶ月を、痛みなく走り切れる状態かどうかを確認します。

どれだけ良い練習を積んでも、途中で投げられなくなったら、そこで終わり です。だから最初に見ます。

進め方は、2軸です

この2つが揃って、はじめて自分の現在地が分かります。

そのうえで、この回では この2ヶ月の大枠と、成長の方法 を共有します。

この2ヶ月の方向性

勝てる投手になるための要素を知ること

第1回は、その出発点です。

最終的に目指すのは、自分の投球や身体の状態を正確に把握した上で、自分の目標達成に向けて正しい努力ができる状態 を作ることです。

この日は、上手い・下手を決める日ではありません。

球速を見て落ち込む必要も、動画を見て急いでフォームを直そうと焦る必要もありません。

まずは、自分の現在地を知る。そこから、この2ヶ月で何を学び、どこを変えていくのかを一緒に確認していきます。


第1回で行うこと

セッションは、座学2軸(身体評価・測定) で構成します。

座学……PDPの全体像と学び方(勝てる投手とは何か・7局面・エネルギーフロー)

軸① 身体評価

項目見るもの
開脚股関節の可動域
ブリッジ胸椎の伸展、肩の可動域
回旋可動域の確認身体をどれだけ捻れるか
しゃがみ込み足首・股関節の連動
呼吸のテスト体幹を支える土台が働いているか
肩・肘のコンディション確認痛み・違和感の有無

軸② 投球評価

1人15〜20球を投げてもらいます。内訳は ストレート10球+変化球を各球種3〜5球ずつ

項目見るもの
SmartScout|投球指標球速・回転数・回転効率・回転方向・変化量
動画|投球分析7局面の通過、投手タイプ
フィジカル測定身長・体重/立ち幅跳び/MBチョップスロー

それぞれの詳細は、後のセクションで一つずつ説明していきます。


PDPの最終ゴール

PDP(Pitching Design Project)の最終ゴールは、次の2つです。

  1. ピッチングの本質を理解し、今後の練習方法と方向性を、自分で定められるようにすること
  2. 野球の、ピッチングで、自分自身の目標を達成できるようにすること

ピッチングは、ただ投げ込めばいいわけでも、ただトレーニングを積めばいいわけでもありません。

そこには、理論があり、練習方法があり、トレーニング方法があり、マウンドでの考え方があります。

試合で抑える。試合で投げられるようにする。上のレベルでプレーする。各自の目標を達成する。

そのための方法を、PDPでは色々な角度から、可能な限り伝えていきます。

そのために、PDPは8回構成で組まれています。

測定 → ゴール(リリース・フォロースルー)→ フットプラント〜ローテーション → ドライブ+ロード → レッグアップ → 変化球 → 実戦 → 再測定 という流れで設計されています。

7局面の順番とは、逆から進みます。理由は、次の節で説明します。


全8回の流れ

2ヶ月で、次の順に進みます。毎週火曜 20:00〜21:30、全8回です。

日付テーマ
第1回9月1日初回測定・現状把握(今日)
第2回9月8日ゴール:リリース・フォロースルー
第3回9月15日フットプラント 〜 ローテーション
第4回9月22日ドライブ + ロード
第5回9月29日レッグアップ
10月6日(休講)
第6回10月13日変化球・ピッチデザイン
第7回10月20日実戦につなげる
第8回10月27日再測定。今日と同じ項目を測ります

予定について

7局面の順番とは、逆から進みます

第2回で扱うのは ゴール、つまりリリースとフォロースルーです。

どこへ向かっているのかを先に握ってから、そこへ至る手前の局面を遡っていきます

出発点(レッグアップ)から順に積み上げるやり方もありますが、その場合、何のためにその形をつくるのかが分からないまま進むこと になります。先にゴールを見ておけば、手前の局面が「何のためにあるのか」で理解できます。

今日の測定は、この8回すべての土台になります。


良い投手とは。そして、勝てる投手とは

ここで一つ、握っておきたいことがあります。

それは「良い投手とは何か」「勝てる投手とは何か」という定義です。ここが揃っていないと、2ヶ月の練習の方向が決まりません。

私が考える良い投手の条件は、次の4つです。

  1. チームを勝たせられること
  2. 打者を抑えられること
  3. 再現性があること(狙ったところに、同じ質のボールを投げられる)
  4. 怪我をせずに投げられること

これを数字で見ると、次のようになります。

球速は、このための重要な手段のひとつです。ただし、球速だけを追いかけるのは順番が違います

ゲームを作れる投手が先。球速は、正しい体の使い方を積み上げた結果として、後からついてきます。

勝てる投手をつくる6つの要素

そのうえで、試合で勝てる投手 を要素に分けると、次の6つになります。

要素ひとことで言うと
1球速ボールの強さ
2コントロール狙ったところへ投げられるか
3変化球球種の幅と、その質
4フォーム上の3つを支える動作。再現性と負荷の少なさ
5投球術打者・カウント・場面に対する組み立て
6思考どう考えて、マウンドに立つか

この6つを、体系的に学んでいくのがPDPです。

多くの選手は、このうち1つか2つだけを見ています。球速だけ。あるいは変化球だけ。

要素が6つあると分かっているだけで、自分に足りないものの見え方が変わります。

PDPが目指すもの

PDPは、次の順番で進みます。

  1. 身体の使い方を知り、理解する
  2. 自分自身のフォームを、ある程度理解する
  3. 怪我が少なくなるような身体の使い方・フォームを獲得する方法を学ぶ
  4. 結果的にフォームが安定して、強いボールが投げられるようになる

順番が大事です。強いボールは、4番目に来ます。最初に来るのは、身体の使い方を知ることです。

そして、怪我のリスクを下げることも、大きな柱の一つ です。

強いボールを投げることと、身体を守ることは、対立しません。

負荷の少ないフォームというのは、エネルギーがどこかで詰まっていないフォームのことです。詰まりがなければ、力は末端まで流れます。だから、球も強くなる。この2つは同じものの裏表です。

私の指導の基本スタンス

だからこそ、「自分がどうなりたいか」という目標設定が重要 になります。

エースとして完投したい人もいれば、短いイニングを全力で抑えたい人もいる。野手との二刀流の人もいる。

置かれた状況と、チームから求められているものは、選手それぞれ違います。

野球人生は、私のものではなく、あなたのものです。
そこを握った上で、PDPの2ヶ月を使っていってほしいと思っています。

投球は7つの中継点で見る

投球フォームは、次の 7局面(中継点) に分けて見ていきます。

レッグアップ1

レッグアップ

軸足に立つ

ロード2

ロード

力を貯める

ドライブ3

ドライブ

地面をとらえて前へ進む

フットプラント4

フットプラント

並進を回旋に変える

ローテーション5

ローテーション

骨盤→体幹→腕の順に回す

リリース6

リリース

指先まで伝える

フォロースルー7

フォロースルー

減速し、肩肘を守る

※ 上の絵は、局面の位置を示すためのものです。角度も服装もそれぞれ違います。フォームの見本ではありません。

この中継点をひとつずつしっかり通っていけば、フォームはある程度、良い形になります

この7つの中継点は、良い選手に共通して現れる部分です。これを アトラクター と呼びます。

細かいところを見る前に、まず大きな部分を見てください。

枝よりも、幹を見る。ここを外すと、直しても直しても変わらない、という状態になります。

足の上げ方の高さ、グラブの位置、投げ終わりの形といった枝葉の部分は、選手によって違って構いません。

しかし、良い投手に共通する核 が崩れていると、投球全体にロスが生まれます。

関節には役割がある。動かす関節と、固める関節

身体の関節には、大きく分けて2つの役割があります。大きく動かして力を生み出す「モビリティ関節」(肩甲上腕関節・股関節・胸椎など)と、土台として力を受け止める「スタビリティ関節」(足関節・膝・肘・腰椎など)です。

この役割が入れ替わってしまう選手がいます。たとえば、股関節が硬くて動かせない選手は、代わりに腰椎を大きく動かして投げようとします。本来スタビリティ関節であるはずの腰椎が、モビリティ関節の代わりをさせられる状態です。

これが、一つの関節の不調が、離れた別の関節の痛みとして現れる 理由です。足首が硬い投手の肩が痛む、股関節が硬い投手の腰が痛む。こうした現象の背景には、たいていこの役割の入れ替わりがあります。だからこそPDPでは、痛みが出ている場所だけでなく、運動連鎖全体 を見ていきます。

動く関節と支える関節

<p class="figcap"><strong>青が「動かす関節」、赤が「支える関節」。</strong>交互に並んでいます。動くはずの関節が動かないと、支えるはずの関節が代わりに動いてしまう。<br>これが、離れた場所に痛みが出る理由です。</p>

PDPでは、各局面でこの アトラクター を特定し、それを揃えることを中心に進めていきます。

詳細は、第2回以降で各局面ごとに掘り下げていきます。

球速は、上げるものではなく、勝手に上がるもの

ここで、PDP全体を貫く考え方をひとつ、先に伝えておきます。

各中継点でアトラクターさえ通過できていれば、それ以外の細部は問題になりません

足の上げ方、グラブの位置、投げ終わりの形。こうした枝葉は、選手ごとに違って構わない。

大事なのは、通るべきポイントを通っているかどうかだけです。

そして、エネルギーの流れを止めないこと・特定の関節に局所的な負荷をかけないこと

この2つが揃うと、結果は2つ同時に起こります。

  1. 怪我をしにくくなる(負荷が一箇所に集中しないため)
  2. 出力(球速)が自然に上がる(エネルギーがロスなく末端まで伝わるため)

球速は、狙って「上げる」ものではありません。正しい順番でエネルギーを流した結果として、「勝手に上がる」もの です。

PDPでは、この順番を整えることを土台に置きます。

たとえば、レッグアップがうまくいかないと、腰を痛めます。下から上へ、力を流すことができません。

出発点でつまずくと、その後の並進・着地・回旋のすべてが苦しくなる。順番の大切さは、第2回以降で局面ごとに詳しく扱っていきます。

球速を構成する要素は、すでに整理されている

「球速アップの方法」と聞くと、無数にあるように感じるかもしれません。しかし、球速に関わる要素そのものは、すでに整理されています。

大きく分けると、身長・筋力・除脂肪体重・RFD(力の立ち上がり速度)・メカニクス(連動性)の5要素、そして制御(コントロール) です。

重要なのは、要素そのものより「今の自分は、どの要素に伸びしろがあるのか」を知ることです。だからこそ、PDPでは測定から入ります。

なお、除脂肪体重は「体重」そのものより、体格差を除いた指標(FFMI=除脂肪量を身長の2乗で割った値)で見るとより正確 になります。体が大きいから球速が出る、細いから出ないという単純な話ではなく、「その体格の中で、どれだけ質の高い筋肉を持っているか」が問われます。PDPでは年代別の目標数値は設定しませんが、第8回で「2ヶ月前の自分」と比べるときの一つの視点として覚えておいてください。


PDPでの学び方について

もう一つ、先に共有しておきたいことがあります。それは「どう練習すれば、実際の投球で使える動きが身につくのか」という学び方の話です。

フォームは、頭で理解しただけでは変わりません。

正しい動きの「感覚」を、体で掴んでいくプロセスが必要 です。

そのために、PDPでは次の考え方を大切にしています。

これは第2回以降、ドリルやエクササイズを行う際の土台になる考え方です。「なぜこのドリルをこの強度でやるのか」を理解しておくと、練習の質が変わります。


もうひとつの見方:エネルギーフロー

7局面が「順番」だとすると、もうひとつ、投球全体を貫く「流れ」の見方があります。

それが エネルギーフロー です。

投球のエネルギーは、腕から生まれるのではありません。

地面への圧から生まれたエネルギーが、下半身→骨盤→体幹→肩甲帯→腕→指先→ボールへと、途切れずに流れる

この流れが作れている投手は、腕を「振りにいく」のではなく、腕が勝手に走る 状態になります。

流れ対応する回
① 地面への圧第2回(レッグアップ+ロード)・第3回(ドライブ)
② 回旋の入り(並進→回旋の変換点)第4回(フットプラント)
③ 胴体の回旋第5回(ローテーション)
④ 末端の加速第6回(リリース)
⑤ 減速(エネルギーの逃がし)第7回(フォロースルー)

第2回以降は、毎回冒頭で「今日はこの流れのどこを扱うのか」を確認してから進めます。

怪我の正体は、エネルギーが流せないところが生まれること

エネルギーフローの考え方が重要な理由は、もうひとつあります。

怪我の予防に直結するから です。

筋力が上がり、出力の最大値が上がっているのに、球速が頭打ちになる。肩や肘を痛める。

こういう選手に起きているのは、多くの場合、エネルギーが流せないところが生まれている ことです。

大きな出力が生まれても、そのエネルギーが全身を通して流れなければ、行き場を失った力が特定の関節に集中します。

投球では、それが 肩・肘 に現れやすい。

だから、PDPでは「出力を上げること」と「肩肘を守ること」を、別々のものとして扱いません。

流れを直せば、球速も上がり、肩肘への負担も減る。この設計で2ヶ月を進めていきます。

なお、プログラム中の実投は、毎回 投球強度と球数を管理した上で 行います。詳しくは後述します。


なぜ測定と分析をするのか

測定と分析を行う理由は、4つあります。

  1. 現状の自分自身を分析する
  2. 同じカテゴリーの選手との差を把握する
  3. 自分自身の過去・未来と比較する
  4. 将来の目標に対する筋道を、より明確にする

課題がはっきりすれば、必要な練習方法もはっきりします。

逆に、現在地が分からないまま練習を積んでも、遠回りになりやすい。

測定は、この2ヶ月の練習を正しく設計するための出発点です。

野球選手であれば、次のような言葉をよく聞くと思います。

もちろん、感覚は大切です。

最終的には、選手一人ひとりが自分の感覚を持っていた方がいい。

ただし、現場でたくさんの選手を見てきて感じるのは、感覚と実際の動作のズレが大きい選手が、非常に多い ということです。

本人は「こう動いている」と思っていても、動画で見ると違う動きになっていることがあります。

そのズレを埋めるために、測定と分析を行います。

数字と動画を使うことで、自分が今どこにいるのかを、より鮮明に把握できます。

他人と比べる。ただし、優劣を決めるためではない

同じカテゴリーの選手と自分の数字を比べることには、意味があります。自分がどのあたりにいるのかが分かって初めて、何を埋めればいいかが決まる からです。

ただし、それは誰が上で誰が下かを決めるためではありません。差を、埋めるべき距離として見るということです。

そしてもう一つ、比べる相手は「過去の自分」と「未来の自分」 でもあります。第8回で同じ項目を測るのは、そのためです。

トラッキングデータで、周りと差をつける

もう一つ、測定をする理由があります。

さきほどの6つの要素——球速・コントロール・変化球・フォーム・投球術・思考。

このうち 球速・変化球・コントロール は、数字で見ることができます。

いま、同じ学年の投手の多くは、自分のボールを感覚だけで捉えています。

「今日は指にかかった」「今日は回転が良かった」。それ以上のことは分かっていません。

そこに数字を持ち込めるかどうかが、差になります。

自分のストレートが、どの方向に、どれだけ回っているのか。

その回転が、変化に対してどれだけ働いているのか。

自分のボールを説明できる投手は、練習の精度が変わります。

だからPDPでは、第1回からトラッキングデータを使います。

そして、その数値が何を見ているのかを、この回で扱います。数字だけ渡されても、読めなければ意味がないからです。


本日と第8回で測定するもの

本日(第1回)と最終回(第8回)で、同じ項目を計測 します。

2ヶ月後にどう変わったかを、数値と映像で見比べるためです。

順番として、身体の評価が先です

このあと投球のデータの話が続きますが、この2ヶ月で軸に置くのは、身体の評価のほうです

理由はひとつです。投球のデータは「結果」だから です。

球速も、回転効率も、変化量も、身体がどう動いたかの結果として出てきた数字 にすぎません。身体の動きが変わらないまま、数字だけを追いかけても動きません。

そして、身体の評価は、明日から自分で変えていけます。開脚も、ブリッジも、回旋も、呼吸も。毎日の積み重ねで動きます。

投球のデータは、その結果として、あとからついてきます。

なお、測定の範囲は年代によって分けます。

① 身体評価|5つの項目

投球の前に、今の身体がどこまで動くのか を見ます。ここが出発点です。

項目見るもの
開脚股関節の可動域
ブリッジ胸椎の伸展と、肩の可動域
回旋可動域身体をどれだけ捻れるか
しゃがみ込み足首と股関節の連動
呼吸体幹を支える土台が働いているか

① 開脚

やり方

床に座って脚を開き、前屈します。どこが床につくか を見ます。

目安

ただし、角度だけで評価しません。次の3つを揃えて見ます。

  1. 肘(投手はおでこ)が床につくか
  2. 両膝が伸びているか
  3. 骨盤を前傾させ、股関節から倒れているか

腰を丸めて頭だけを近づけても、前屈ができていることにはなりません。

骨盤が後傾したまま上体を倒している選手 が、非常に多い。この場合、どれだけやっても股関節は伸びません。

記録

横から写真を撮ります。角度ではなく、どこが床についているかが写るように。第8回で同じ角度から撮り、並べて比べます。

開脚前屈で見る3つのポイント

<p class="figcap"><strong>見るのは、この3つです。</strong>①肘が床につくか(投手はおでこが目安)/②両膝が伸びているか/③骨盤を前傾させ、股関節から倒れているか。</p>

骨盤の傾き 前傾・正常・後傾

<p class="figcap">③の「骨盤の前傾」は、これです。<strong>つまずく人の多くは、骨盤が後傾したまま上体だけを倒しています。</strong>そうすると、どれだけやっても股関節は伸びません。</p>

股関節の可動域6方向

<p class="figcap">そしてもう一つ。<strong>股関節は6つの方向に動きます。</strong>投球では、この全部を使います。<br><strong>開脚は、そのうちの一部を見ているにすぎません。</strong>だから、この2ヶ月では違う方向に効く種目も組み合わせていきます。</p>


② ブリッジ

やり方

ブリッジの姿勢をつくり、10秒キープ します。

見るところは3つ

  1. 肘が伸びているか
  2. 胸が開いて、胸椎の伸展でアーチができているか
  3. お尻が上がっているか

この3つが揃って、はじめて「できている」状態です。腰だけで反ってもアーチにはなりません

アーチの頂点が 胸のあたり に来ているかを見てください。

記録

これも 横から写真 。10秒キープできたかどうかも記録します。

ブリッジ

<p class="figcap"><strong>できている状態です。</strong>肘が伸びていて、胸からアーチができていて、お尻が上がっています。<br>自分のブリッジを<strong>横から</strong>撮ってもらって、この形と見比べてください。</p>

痛みが出たら、そこで止める

ブリッジは肩と腰に負担がかかります。無理だと感じたら、そこで止めて構いません

今まさに痛みがある選手は、やらないでください。


③ 回旋可動域

やり方

  1. 足を閉じて 立ちます
  2. 手を 胸の前でクロス します
  3. その姿勢から、ゆっくり 体を左右に回します
  4. 回せるところまで行ったら、戻します。反対側も同じように

見るところ

ペアで行い、正面から見て、後ろ側の肩が見えてくるか を確認します。

目安

水準回旋
野球選手として目指したい100度くらい
実際に多いところ90度いくかいかないか

記録

数字よりも、左右のどちらが硬いか を覚えておいてください。ここが、この2ヶ月で一番分かりやすく変わる場所です。

動きは、その場で変わります

エクササイズをひとつ、きちんとやった直後にもう一度回してみてください

回しやすくなっているはずです。動きは、正しくやれば即時に変わります。

その「すぐ変わること」を、コツコツ積み重ねていく 。これが2ヶ月の中身です。


④ しゃがみ込み

やり方

足を閉じて、足裏を全部つけたまま しゃがみます。かかとを浮かせません。

見るところ

しゃがめるか、しゃがめないか。それだけです。

しゃがめない場合、可動域に問題があります。考えられるのは2つ。

和式トイレが減ったこともあって、しゃがめない選手は年々増えています

記録

できる/できない。できない場合は、どこで止まるか(かかとが浮く/後ろに倒れる)も残します。


⑤ 呼吸

やり方

  1. 鼻から息を吸います
  2. 鼻をつまんで、息を止めます
  3. 苦しくなって吸いたくなるまでの秒数 を数えます

目安

一般的には、40秒以上止められない場合、呼吸に問題がある可能性がある と言われています。

なぜ見るのか

呼吸は、体幹を支える土台 だからです。ここが働いていないと、どれだけ体幹のトレーニングをしても入りません。

また、試合での緊張のコントロール にも直接関わります。

記録

秒数を記録します。


この5つは、自宅でも確認できます

特別な道具は要りません。開脚・ブリッジ・回旋・しゃがみ込み・呼吸——全部、家でできます

2ヶ月の間、2週間に1回くらい 自分で確認してみてください。

毎日測る必要はありません。ただ、変わっていることに自分で気づけると、続きます

そして第8回で、今日と同じ条件でもう一度測ります。


② SmartScout|投球指標

SmartScoutは、MLB・NPBのチームでも採用されている、スマホ撮影型の投球解析アプリです。

特別なセンサーを体につける必要はなく、投球を撮影するだけで、感覚では分かりにくい投球の情報を数字で確認できます。

本プログラムでは、次の指標を中心に計測・分析します(1人15〜20球/ストレート10球+変化球 各球種3〜5球)。

指標何を見ているか
球速(Initial Velocity)投球の初速です
総回転数(Spin)ボールが1分間に何回転したか(rpm)。1球の間に実際に回った数ではない点に注意
有効回転数(Active Spin)総回転のうち、実際に変化量に寄与した分の回転数
回転効率(Efficiency)総回転のうち、変化や揚力の発生に寄与している回転の割合(%)
回転方向(Spin Direction)投手側から見て、どのような回転で投げられたか。時計盤の短針に見立てて表示されます
ジャイロ角度(Gyro Degree)リリースされたボールを上空から見たとき、回転軸がどのくらい進行方向側へ傾いているか
横の変化量(Horizontal Break)回転せず重力だけが働いた場合を原点として、どれくらいシュート・スライドしたか
縦の変化量(Vertical Break)同じく原点として、どれくらいホップ・ドロップしたか

球速が同じでも、回転の質が違えば、打者から見たボールはまったく別物になります。

「速くなった」だけでなく「ボールの質が変わった」を数値で確認できる のが、この測定の価値です。

画面は、当日その場で見ます

上の指標は、測定のあとに、実際のアプリ画面を一緒に見ながら 説明します。

数字の名前を覚える必要はありません。自分の球がどう表示されるのかを、その場で見てください。

回転数は、変化量をつくる材料のひとつです

ここで、数字の見方をひとつ更新しておいてください

「2500回転だからすごい」という言い方を、よく見かけると思います。

ただ、回転数だけでボールの質は決まりません

ボールが空中で曲がるのは マグヌス効果 によるものですが、その大きさは次の要素が絡み合って決まります。

縫い目でも、ボールは曲がる

回転だけがボールを曲げているのではありません。縫い目の位置 でも曲がります。

ボールの表面を流れる空気は、ある地点でボールから剥がれます。縫い目があると、その剥がれる場所が早まる。片側だけで起きると、そこに力が生まれます。この力は、回転による力(マグヌス効果)と同じくらいの大きさになることがあります

2019年にユタ州立大学の研究チームが名前をつけた、比較的新しい考え方です。握りを少し変えるだけで球が変わるのは、これが理由のひとつです。第6回の変化球で、実際に扱います。

つまり、回転数は素材のひとつ です。完成品である変化量は、その素材が複合的に絡んだ結果として出てきます。

高回転なのに、曲がらないボール

現場で見ていると、高回転なのに変化が小さいボールは珍しくありません。

たとえば、ジャイロ成分の強いフォーシーム(いわゆる「真っスラ」)は、総回転数が多くても変化が小さい。総回転数に対して有効回転数が少ない からです。

逆に、2,200〜2,300回転程度でも、回転効率が高い投手は大きな変化を作ります。総回転数と有効回転数の差が小さいためです。

実例:MLBの日本人投手7人・フォーシーム(2026年シーズン)

球速の速い順に並べています。

| 投手 | 平均球速 | 回転効率 | 縦の変化量 | 横の変化量 |

|---|---|---|---|---|

| 大谷 翔平 | 98.1 mph(約158 km/h) | 75 % | 14.0 in(約36 cm) | 5.0 in(約13 cm) |

| 佐々木 朗希 | 97.8 mph(約157 km/h) | 97 % | 16.1 in(約41 cm) | 9.7 in(約25 cm) |

| 千賀 滉大 | 96.3 mph(約155 km/h) | 86 % | 16.2 in(約41 cm) | 6.7 in(約17 cm) |

| 山本 由伸 | 96.0 mph(約155 km/h) | 93 % | 16.1 in(約41 cm) | 8.3 in(約21 cm) |

| 菊池 雄星(左) | 95.5 mph(約154 km/h) | 88 % | 15.6 in(約40 cm) | 6.4 in(約16 cm) |

| 松井 裕樹(左) | 91.9 mph(約148 km/h) | 95 % | 19.4 in(約49 cm) | 4.7 in(約12 cm) |

| 今永 昇太(左) | 91.6 mph(約147 km/h) | 99 % | 17.7 in(約45 cm) | 11.2 in(約28 cm) |

横の変化量は、利き腕側へどれだけ動いたかの大きさ です。右投手と左投手では向きが逆になるので、大きさで見てください

まず、上の2人を見比べてください。

大谷投手と佐々木投手は、球速がほぼ同じです(158 km/h と 157 km/h)。

それなのに、縦の変化量は 36 cm と 41 cm。5 cm 違います

差がついているのは 回転効率 です。75 % と 97 %。

同じ速さで投げても、回転が変化に使えていなければ、ボールは同じようには変化しない 。この表が、それをそのまま示しています。

次に、いちばん下の2人を見てください。

松井投手と今永投手は、球速では7人中いちばん下です。147〜148 km/h。

ところが、縦の変化量では1位と2位 。松井投手の49 cm は、大谷投手より13 cm も大きい。

球速が武器にならないという話ではありません。大谷投手の158 km/h は、それ自体が圧倒的な武器です。

ここで見てほしいのは、「球速」と「変化量」は別々の武器であり、片方が高ければもう片方も高くなる、という関係ではない ということです。

回転を「増やす」より、回転を「使えるようにする」 。数字の読み方として、ここを覚えておいてください。

<small>出典:Baseball Savant(MLB公式Statcast)2026年シーズン・フォーシームの平均値。回転効率=Active Spin、縦の変化量=Induced Vertical Break、横の変化量=Induced Horizontal Break。km・cm は換算値です。</small>

この表は、目標ではありません

ここから先はMLBの数字が続きますが、これは「こういう世界がある」という参考です

明日みなさんが受け取る数字は、この表と比べるためのものではありません。

大事なのは、自分自身の数値を知ること 。それだけです。

そして2ヶ月後、比べる相手は他の誰でもなく、今日の自分 です。

縦の変化量は、どこを目指せばいいのか

MLBの目安は、次のとおりです。

| 水準 | 縦の変化量 |

|---|---|

| リーグ平均 | 15〜16 インチ(約38〜41 cm) |

| エリート | 19〜21 インチ(約48〜53 cm) |

上の表をもう一度見てください。大谷・佐々木・千賀・山本・菊池の5人は、リーグ平均のあたり にいます。そして 松井投手の19.4インチは、エリートの領域 です。

縦の変化が大きいほど、空振りを取りやすくなります。打者がボールの下を振るからです。

そして、縦の変化のほうが、横の変化よりも空振り率への影響が大きい ことが分かっています。だから、フォーシームではまず縦を見ます。

これは、みなさんが明日から追う数字ではありません。MLBの基準です。ただ、自分の数字がどういう地図の上にあるのか を知っておくと、測定結果の見え方が変わります。

同じ投手でも、球種が変われば数値は別物になる(佐々木朗希投手・2026年)

| 球種 | 球速 | 回転効率 | 縦の変化量 | 横の変化量 |

|---|---|---|---|---|

| フォーシーム | 97.8 mph(約157 km/h) | 97 % | 16.1 in(約41 cm) | 9.7 in(約25 cm) |

| スプリット | 90.2 mph(約145 km/h) | 83 % | 1.2 in(約3 cm) | 7.1 in(約18 cm) |

| スライダー | 86.6 mph(約139 km/h) | 27 % | −1.7 in(約−4 cm) | 1.3 in(約3 cm) |

同じ投手の腕から出るボールでも、回転効率は 97 % から 27 % まで変わります

ここが大事なところです。回転効率は「高ければ良い」という数字ではありません。

フォーシームは、回転を変化に使いたい ので効率が高いほうがいい。

一方でスライダーは、回転軸を意図的に傾けて曲げる 球です。効率が低いこと自体が、その球の設計です。

指標には、球種ごとに「目指す方向」がある 。自分の数字を見るときは、球種とセットで読んでください。球種ごとの詳しい設計は、第6回(変化球・ピッチデザイン)で扱います。

<small>出典:Baseball Savant 2026年シーズン。</small>

身長が高くないほうが、有利になることもある

もうひとつ、覚えておいてほしい数字の見方があります。VAA(ボールがホームベースを通過するときの角度) です。

この角度が 0に近いほど「フラット」 で、特に高めで空振りを取りやすくなります。フラットな投手は、多少コースがズレても空振りが取れる——許容の幅が広い ということです。

面白いのはここからです。VAAは、リリースの高さと、ボールが到達する高さだけで決まります回転数にも、球速にも、変化量にも影響されません。

つまり、リリースが低い投手のほうが、フラットな角度を作りやすい

さきほどの表で縦の変化量1位・2位だった松井投手(173cm)と今永投手(178cm)は、7人の中で背が高いほうではありません

「背が低いから投手として不利」ということはありません。打者は、いつも見ている角度にスイングを合わせています。その角度から外れることが、空振りを生みます

だから、見るのは「変化量」です

PDPでは、回転数よりも 変化量を軸に 見ていきます。理由は3つです。

  1. 打者が感じているのは、軌道だから

打者は回転数を感じません。感じるのは軌道です。投手の武器は、打者の感覚をズラす軌道差 です。それを直接示すのが変化量です。

  1. 変化量は「結果」の数字だから

回転数が上がっても、変化が増えなければ意味がありません。変化量には、フォーム・握り・球種の設計がそのまま出ます。だから、練習の手応えを測る材料になります。

  1. 世界の評価軸も、そちらへ動いているから

近年のMLBでは、球速・変化量・リリース位置・回転数といった物理特性から、ボールそのものの質を評価するモデル(Stuff+ など)が使われています。回転数も材料には入っていますが、重みが大きいのは球速と変化量 です。

回転数と変化量は「ニアイコール」

誤解しないでほしいのは、回転数を追うことが無意味だと言っているのではない ということです。

例外はありますが、基本的には回転数が多いほど変化量も大きくなります。一定の相関はある。ただし、同義ではありません。

大事なのは「回転数か、変化量か」という二択にしないことです。回転数は、変化量を構成する一要素 。その距離感を掴んでおくと、自分の数字を正しく読めるようになります。

③ フィジカル測定|立ち幅跳び・MBチョップスロー

SmartScoutでの投球指標に加えて、フィジカル測定も行います。

測定見ているもの
身長・体重出力の土台。除脂肪体重の把握にもつながります
立ち幅跳び下半身の出力(筋力・RFD
MB(メディシンボール)チョップスロー回旋方向への出力・上下半身の連動性

なぜ、この2つを測るのか。理由は、140km/h・150km/hといった一定の球速を出すためのフィジカル的な目安が、すでに明らかになっているため です。

球速は、感覚だけで語れるものではなく、身長・筋力・除脂肪体重・RFD・メカニクス(連動性)・制御という要素の積み上げです。

立ち幅跳びとMBチョップスローは、この中の「筋力」「RFD」「連動性」を、フィールドで簡易的に把握するための指標として使います。

出力の方程式:筋力×RFD×連動性

球速に関わるフィジカルは、次のようにシンプルに整理できます。

この2つが伸びれば、それだけで球速が上がるわけではありません。ただし、この2つが弱い状態でメカニクスだけを整えても、出力の天井はすぐに来ます。「器(筋力・RFD)」と「伝え方(メカニクス)」は、両方揃って初めて機能します。

測定のやり方

立ち幅跳び

両足を揃えて立ち、両足で踏み切って、両足で着地 します。3回跳んで、いちばん良い記録 を採用します。

腕の反動は使って構いません。着地でバランスを崩して手をついた場合は、やり直しです。

MBチョップスロー

メディシンボールを持ち、体を捻る動きから、斜め下方向へ投げます。左右それぞれ 3回ずつ、いちばん良い記録 を採用します。

ボールの重さは 1kg です。全員同じ条件で行います。

重ければ良い記録が出る、という測定ではありません。2ヶ月後に同じ条件で比べられることが大事なので、第8回も同じ1kgで測ります

測定は、順位をつけるためではありません

どちらの数字も、他の選手と比べるためのものではありません

第8回で、同じ条件でもう一度測ります。そのときに比べる相手は、2ヶ月前の自分です。

だからこそ、今日は全力で やってください。手を抜いた記録が残ると、2ヶ月後の比較が意味を失います。

年代別の基準値表は、作りません

「この学年ならこの数字」という一覧は出しません。目指す場所を決めるのは、選手自身 だからです。

比べる相手は、2ヶ月前の自分です。

④ 動画|投球分析

正面・側面から動画を撮影し(各5球)、数字だけでは分からない動きの流れを見ます。

投球を7局面に分けて、それぞれの中継点を通れているかを確認します。

今日は、点数をつけません

7局面のどこで何が起きているか を、動画を見ながらその場で言葉にして伝えます。

点数化した評価シートは、第2回以降にお渡しします。今日の映像は保存し、第8回の映像と並べて比較します。

⑤ 投手のタイプを知る

動画分析では、良い・悪いだけでなく、自分がどんなタイプの投手なのか も一緒に見ていきます。

投手には、体の使い方の個性があります。たとえば、次のような軸で見ることができます。

どのタイプが良い・悪いということはありません。ただし、アトラクター(良い投手に共通する動作の核)は、タイプに関わらず揃える必要があります。

タイプは個性、アトラクターは土台。この2つを分けて見ることが、PDPでのフォーム作りの前提になります。

もう一つ、ボールの握り方にも個性 があります。指先で握るタイプと、手のひらで握るタイプです。これは投球の質やリリースの感覚に直結する部分なので、第6回(リリース)で詳しく扱います。

タイプは、その場で言葉にして返します

シートには落とし込みません。測定と動画を見ながら、その場で言葉にして伝えます

タイプは優劣ではありません。自分の身体と、いま出ている数字に合った伸ばし方を選ぶための材料 です。第2回以降、局面ごとの話をするときの前提になります。

⑥ 肩肘のコンディション確認

投球は、肩・肘への負担と切り離せません。

第1回では、肩肘の状態と可動域を確認し、安全にプログラムを進められる状態か を最初に把握します。

痛みや違和感がある場合は、無理をさせません。その選手に合わせて、負荷とメニューを調整します。

なお、PDP期間中の実投は、毎回 投球強度(全力に対する割合)を管理した上で 行います。強度の考え方とフォロースルーでの減速の詳細は、第7回で改めて扱います。

確認するのは、次の2つです。

  1. いま、痛みや違和感があるか(いつから/どの動きで/どの程度か)
  2. 肩と肘の可動域(①の身体評価と合わせて見ます)

痛みがある場合は、病院が先です

今まさに痛みがある選手は、まず整形外科で診てもらってください

ここで扱うのは「動きの評価」であって、診断ではありません。痛みを我慢して2ヶ月を進めても、良い結果にはなりません。


数字の扱い方

自分自身の現在地と、目指すべき場所の基準を明確にする

良い・悪いを決めるためではありません。

今どこにいて、どこを目指すのか。数字は その基準を作るため に使います。


動画の見方

アトラクターを見る

まずは 大きな木 から見られるようにする。

そこから少しずつ、枝葉 へ降りていく。

動画を見るとき、いきなり細かい部分を直そうとしないでください。

肘の高さ・リリースの位置・腕の振りだけを見ても、原因は分かりません。

投球は、独立した部品ではありません。

ロードが崩れた結果、並進がズレる。並進がズレた結果、着地が乱れる。着地が乱れた結果、回旋が遅れ、リリースがバラつく。

だから、動画は 逆算 で見ます。結果から原因を探す。

ただし、修正は前の局面から 行う。

この順番を外さないことが、非常に大切です。


今日受け取るもの

今日のフィードバックでは、細かい修正を大量には伝えません。

理由はシンプルで、一度に直そうとするとフォームが壊れるからです。

今日受け取ってほしいのは、「自分が一番、優先的に直すべき場所」 ひとつだけです。

「今の自分は、どの局面で一番ロスが起きているのか」

これが分かれば、第2回以降の学び方が変わります。


第2回までの課題(全4つ)

第2回は、レッグアップとロードに入ります。

投球の出発点です。ここで軸足に乗れず、力を貯められないと、その後の並進・着地・回旋はすべて苦しくなります。

その準備として、以下の4つに取り組んでください。

課題① フォーム分析と投球データから、自分の特徴を理解する

本日のフォーム分析と投球データは、後日お送りします。

送られてきたものを見て、自分のピッチングにどういう特徴があるのかを理解してください

上手い・下手ではなく、特徴です。速い遅い、回転が多い少ない、どの局面で崩れやすいか。

本日のテキスト(このページ)を横に置いて確認してください。

来週以降で、改善のための考え方や練習方法を伝えていきます。

ここで、自分の課題を明確にするかしないかで、この2ヶ月が大きく変わります

わからない点があれば、保護者の方を通じて連絡してください。

なお、第2回(レッグアップ+ロード)の公式テキストも、開催前に共有します。

質問できる能力も、上達のための力

第2回以降は、毎回 質問対応の時間 を作ります。

質問できる能力も、野球が上手くなったり、周りよりも成長したりするための一つの能力 です。

分からなかった点や、実際の練習・試合で出てきた疑問点は、毎回持ってきて ください。

保護者の方も、一緒に取り組んで学んでください。

課題② アーカイブ動画を最低1回見る

アーカイブ動画も、後日共有します。

最低1回は見ること を、課題にしてください。

私自身がやっているインプット方法

これは私自身もやっていることなのですが、何かをインプットする時は、

最初は 動画を見て、2回目・3回目は 音声だけでも聞いて インプットします。

単純に 何回も繰り返しインプットすると、自然と定着しやすくなります

課題③ 毎日体重を測定する

毎日の体重測定は、習慣化の第一歩 です。

ピッチングを良くする上でも、身体を大きくすることは重要 だと考えています。

除脂肪体重が増えれば、球速は上がりやすい。これは研究でも現場でも一致しているところです。

この2ヶ月で、毎日測る習慣 をつけてください。朝・夜の2回測定できると、なお良いです。

記録用のシートは配りません。野球ノートに、1行書けば十分 です。

大事なのは、記録の形式ではなく 毎日測ること です。

課題④ ビジョン・目標設定

個人的には、野球のスキルやフィジカルよりも重要 だと思っている部分です。

「どうなったら最高か?」 から考えてください。

最初は、現状を抜きにして考えて構いません。

まずは、自分が本当にどうなりたいのかを出す。その上で、そこに向かうために今何をするべきかを考えます。

とくに PDP終了時(2ヶ月後) については、次の3つを自分の言葉で決めてください。目安となる数字をこちらから示すことはしません。どこを目指すかを決めるのは、選手自身 だからです。

  1. 2ヶ月後、どれくらいの球速を目指すか
  2. (中学生以上)どんな変化球を投げられるようになりたいか
  3. どんな形(どんな抑え方)で、打者を抑えるのが理想か

この3つは、後の回で自分のフォームや練習を振り返るときの「軸」になります。

ここを細かくやっていくと、方向性を間違えない

一旦決めると、優先順位も明確 になる。

途中で目標が 変わってもいい。ただし、自分自身が 「最高」と思う状態 に向かえるように、日々を過ごすことが重要です。

この課題④は、やればやるほど大きく差がつきます。

めんどくさくてやらない選手が多いですが、やれる選手は長期で圧倒的に伸びていきます。


第1回のまとめ

今日のゴールは、2つだけでした。

  1. 自分の現在地を知ること
  2. 怪我のリスクを減らすこと

この2つが取れていれば、今日は成功です。球が速かったかどうかも、良い数字が出たかどうかも、今日は関係ありません。

測定と分析は、自分を責めるためではなく、練習を設計するため に行います。

そして身体の評価は、この2ヶ月を、痛みなく走り切るため に行います。

投げられなくなった時点で、成長は止まります 。だから最初に見ました。

PDPの2ヶ月で目指すのは、完璧なフォームを作ることではありません。

目指すのは、自分の投球を、自分で説明できる状態 です。

自分の投球、自分の動きを理解できる選手は、練習の質が変わります。

試合で崩れても、その崩れを修正することができます。調子が良い時も、なぜ良いのかを残せます。

この修正能力が、良い投手の最大の強み になっていきます。

そして、再現性が高まります。

PDPは、2ヶ月で終わるイベントではありません。

2ヶ月で、これから自分のピッチングを良くしていくための 地図 を作るプロジェクトです。

まずは、今の自分を正確に知る。そこから、2ヶ月間の練習を設計していきます。


次にやること(第2回までの行動リスト)

迷ったらこのリストに戻ってきてください。


参考文献・データ出典

本テキストで使った数値と考え方の出どころです。自分で確かめられるようにしておくこと も、学びのうちです。

選手データ

大谷翔平/佐々木朗希/千賀滉大/山本由伸/菊池雄星/松井裕樹/今永昇太<br>

<https://baseballsavant.mlb.com>

指標の定義

<https://www.mlb.com/glossary/statcast/induced-vertical-break>

<https://library.fangraphs.com/pitching/stuff-location-and-pitching-primer/>

<https://blogs.fangraphs.com/a-visualized-primer-on-vertical-approach-angle-vaa/>

研究

*Using baseball seams to alter a pitch direction: The seam shifted wake*<br>

Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part P<br>

<https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1754337120961609>

<https://www.baseballprospectus.com/news/article/31030/prospectus-feature-introducing-pitch-tunnels/>

日本のトラッキングデータ

<https://www.sony.co.jp/news-release/202503/25-013/>

数字は、誰でも見られる時代になりました

かつては球団の中だけにあったデータが、いまは誰でも見られます。MLBのデータはBaseball Savantで、日本のデータもNPB+で公開が始まりました。

見られることと、読めることは違います。この2ヶ月で、読めるようになってください。


用語集

本文中の専門用語(リンク色の語)をタップすると、ここに飛びます。各語にカーソルを合わせると説明も表示されます。

用語意味
SmartScoutスマホで撮影するだけで投球を解析できる計測アプリ。球速・回転数・回転効率・変化量などを数値化する
7局面投球の中継点。レッグアップ→ロード→ドライブ→フットプラント→ローテーション→リリース→フォロースルー
レッグアップ足を上げ、軸足でバランスを取る局面。投球の出発点
ロード力を貯め、並進の準備をする局面
ドライブ骨盤主導で並進する局面。地面反力をもらい、ホーム方向へ進む
フットプラント前足の着地動作。並進を回旋へ変換する変換点で、制球の土台
ローテーション骨盤→体幹→腕の順に回旋する局面。球速の源泉
リリースボールを離す瞬間。指先までエネルギーを伝え、ボールの質を決める
フォロースルー投げ終わりの減速局面。全身で減速することで肩肘を守る
アトラクター良い投手に共通して現れる動作の核。再現性ある投球の中心軸
エネルギーフロー地面から生まれたエネルギーが、下半身→体幹→腕→指先→ボールへ途切れずに流れること
回転効率総回転のうち、変化や揚力の発生に寄与している回転の割合
有効回転数総回転のうち、実際に変化量へ寄与した分の回転数
ジャイロ角度リリースされたボールを上空から見たとき、回転軸が進行方向側へどれだけ傾いているか
マグヌス効果回転するボールの周りで空気の流れに差ができ、ボールが曲がる現象
VAAVertical Approach Angle。ボールがホームベースを通過するときの角度。0に近いほどフラット。リリースの高さと到達点の高さで決まる
SSWシームシフトウェイク。縫い目が空気の流れを変えて生まれる変化。マグヌス効果とは別の仕組み
投球強度実投を全力投球に対する割合で捉える考え方。負荷管理と傷害予防の基準になる
RFDRate of Force Development。力の立ち上がり速度。どれだけ速く力を発揮できるかを示す指標

<!-- 参照: Baseball Savant https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/yoshinobu-yamamoto-808967 (2026シーズン・4-Seam Fastball: 96.0mph / active spin 93% / IVB 16.1in、spin rate 2246rpm は player-scroll?player_id=808967 より)-->

<!-- 参照: Baseball Savant savant-player(大谷660271 / 佐々木808963 / 千賀673540 / 山本808967 / 菊池579328 / 松井673513 / 今永684007・2026シーズン4-Seam)/FanGraphs Sabermetrics Library "Stuff+, Location+, and Pitching+ Primer"/Smith & Smith (2021) "Using baseball seams to alter a pitch direction: The seam shifted wake", Utah State University -->